2017.2.8 –10
北海道大学大学院共通科目『地球環境史概論』を喜界島にて開講しました。遠く札幌から4名の大学院生が喜界島にやってきました。早朝4時にフェリーではるばるやってくる受講生のみなさんを待っている時間がワクワクしました。
昨年度まで『地球環境史概論』は札幌で開講されており、講義室で講義を聞いてディスカッションを行うものでした。喜界島に拠点ができたので、地球環境変動が作った地形を、学生のみなさんと実際に体感しながら議論できたら面白いだろうな…ということで、今年は初めての学外での開講になりました。
午前中は研究所でコーヒーを飲みながら、講義とディスカッションでサンゴと地球環境の関係について考えたのち、午後は喜界島のサンゴとサンゴ礁地形を実際に観察しながら、地球環境に対するサンゴ礁の実際の応答を見てもらう…という理想の講義が実現しました。
受講生のみなさんはそれぞれ専門がバラバラで、サンゴという生き物について今回、初めてじっくり考えてくれたと思います。そんな中で、分野が違っていても共通する考え方があったり(もちろん、お互いに違いを発見したり)、サンゴ礁の研究に活かせそうなアイディア、研究手法を提案してくれました。さすが大学院生です。少人数だったので、じっくり話をする時間が取れて、私たちも面白かったです。
天気がすぐれなかったですが、ちょっとでもチャンスがあればフィールドワーク!というアクティブな受講生のみなさんでよかったです。(写真を撮った時は本当に風が強かったですね。)
次回は海に入れる季節に開講したいなと構想中です。
『地球環境史概論』は聴講生・科目履修生として一般の方の参加も可能です。喜界島のサンゴと地球環境について考えてみたい方は是非、来年度の参加をご検討ください。詳細は下記をごらんください。お待ちしております。
(山崎)
北海道大学大学院共通授業科目『地球環境史概論』
担当: 渡邊剛・山崎敦子(北海道大学理学研究院)
言語: 日本語と英語のバイリンガル授業
地球は、過去の地質時代において様々な環境の変化や事変を伴うダイナミックな変動を繰り返し、生物は、絶滅と進化を繰り返し現在に至っている。サンゴ礁は、造礁性サンゴを始めとする生物が石灰化を行うことにより形成され、その中に多種多様な生物と豊かな生態系を保持している。以下の命題について、それぞれのキーワードと簡単な解説・喜界島でのフィールドワークをもとにディスカッションとディベートを行い、様々な分野や問題が複合的に絡み合う地球環境史を学ぶための基礎力を養う。
- 現在の地球は温暖化しているか?
キーワード: 第四紀と地球史、人類活動と二酸化炭素濃度、IPCC、観測記録、古気候指標
- 温暖化するとエルニーニョは活発化するか、消滅するか?
キーワード: エルニーニョ現象、過去のエルニーニョ記録、パーマネントエルニーニョとクールエルニーニャ説、エルニーニョの内因および外的フォーシング
- “サンゴ”は二酸化炭素の放出源か吸収源か?
キーワード: 石灰化と二酸化炭素、炭素循環、有機生産と無機生産、風化プロセス
- 温暖化すると北海道にサンゴは到達するか?
キーワード: 地球温暖化と海洋酸性化(大気二酸化炭素濃度と炭酸塩飽和度)、高水温線の北上と低炭酸塩飽和度線の南下、サンゴの適応、過去の水質記録
- 温暖化するとサンゴは方解石を作るようになるのか?
キーワード: 海洋酸性化、アラゴナイトシーとカルサイトシー、海洋組成変化、化石記録
- 富栄養化(海洋汚染)が進行するとサンゴ礁は藻場に交代するか?
キーワード: 栄養塩とサンゴ礁、フェーズシフト、ローカルストレスとグローバルストレス、人類活動とサンゴ生態系
- サンゴと共生藻類の共生関係は将来も続くか?
キーワード: サンゴの適応戦略と進化、過鞭毛藻との共進化、白化現象と過鞭毛藻グレード
- 人間とサンゴは共生すべきなのか?
キーワード: サンゴ礁の資産(水産、観光、居住地)、開発と保護、生物多様性とサンゴ礁
北海道大学理学院 聴講生・科目履修生募集のご案内
http://www.sci.hokudai.ac.jp/graduateschool/entrance/examinee/