琉球列島「最北端」のアオサンゴの群生を確認

鹿児島県大島郡喜界町で、長さ230 m幅40 mの面積約6217㎡にわたるアオサンゴの群生を確認しました。今後は、地元ダイビング業者や自治体と協力し、保全を進めていきます。

■ 経緯
アオサンゴは、アオサンゴ目、アオサンゴ科、アオサンゴ属の1 属1 種のサンゴであり、IUCN(国際自然保護連合)のレッドデータリスト絶滅危惧Ⅱ類に掲載されています。アオサンゴの分布域は広く、インド太平洋のサンゴ礁地域に生息し、日本では琉球列島のサンゴ礁海域で生息が確認されています。世界最大級とも言われる石垣島白保の大群生の他に、石垣島伊原間・沖縄本島大浦湾において群生が確認されています。これまで喜界島では、アオサンゴの生息は確認されていましたが、連続性の良い群生は確認されていませんでした。2019年9月に喜界島小野津沖においてヨネモリダイビングサービスのガイド依田純一氏とWWFジャパン職員の鈴木倫太郎氏が潜水したところ、大規模なアオサンゴの群生の存在を発見しました。同年10月18日に喜界島サンゴ礁科学研究所とWWFジャパンは共同で生息範囲の調査を実施しました。(調査協力:ヨネモリダイビングサービス)

【 調査方法 】
調査は海上から目視によってアオサンゴの群生が生息している範囲を確認し、その後スクーバ潜水によって、アオサンゴの群生の範囲を確認するとともに、造礁サンゴの被度(海底を覆う生きたサンゴの割合)、アオサンゴの割合について、スポットチェック法によって記録しました。また記録したポイントの海上において、GPSを用いて緯度経度の位置情報を取得しました。これらの調査の結果、小野津沖に分布するアオサンゴの群生の範囲とその状況を把握しました。

【 調査結果 】
アオサンゴの群生は水深6~20 mの間に長さ230 m、幅40 mの範囲、面積約6217㎡にわたって分布していることを確認しました。この範囲の中におけるサンゴの被度は20~90%であり、水深が浅くなるほどサンゴは少なくなります。また、この範囲内においてサンゴの被度は一様ではありませんが、連続してアオサンゴが分布し、サンゴの被度が90%を超える場所においては、その9割がアオサンゴによって占められる場所も確認されました。また、アオサンゴ群体の形は、棒状のものが多く、石垣島の白保のサンゴ礁で見られる板状のものとは異なります。

【 関係機関との調整について 】
喜界島サンゴ礁科学研究所・喜界町役場・WWFジャパンが協議し、確認したアオサンゴの群生について、地元団体へヒアリングを実施しました。

■ヒアリングの結果
・アオサンゴの群生の海域は潮流が非常に速く、安全性に不安があります。
・この海域では通常、漁業活動及びダイビングを行うことはありません。
(稀に活動することもあります)

【 地域でアオサンゴを見守る指針 】
ヒアリングの結果をもとに、地域でアオサンゴ を見守るための指針を定めました。

(1)陸から直接行かない。
アオサンゴが見られる場所は、潮の流れが大変早くとても危険な場所です。海岸から泳いで近づくと、流される危険があります。陸から泳いでいかないようにお願いします。

(2)船で行く。
アオサンゴを見に行く場合は、海域に詳しい方にお願いして船で訪れてください。
このアオサンゴ群生に関するお問い合わせは、喜界島サンゴ礁科学研究所へご連絡ください。

(3)継続的なモニタリングを実施する。
アオサンゴを守るために、群生の状況を定期的に調査します。

(4)関係機関と協力した保全を進める。
アオサンゴの群生に変化があった場合、関係者と情報を共有し、適切に対応するための話し合いを行います。

(5)事故防止
島外からの観光客の方が事故にあわないように不用意な情報提供等は避けましょう。

【 今後の展開 】
喜界島で確認されたアオサンゴの群生は、これまで琉球列島で確認されてきたもののなかで最北端に位置する大群生であることから希少な存在と考えられます。学術的な観点だけではなく、地元の方々のサンゴ礁への興味関心の喚起、地域社会とサンゴ礁海域のつながりの構築、地元の自然資源、また共通財産として多様な価値を有しています。この島の方々にとっての共有財産を保全する目的から、アオサンゴの群生の継続的なモニタリングが必要です。今後は、喜界島サンゴ礁科学研究所が中心となり、地元ダイバー・事業者等による定期的なモニタリング調査を引き続き行う予定です。

 

本件に関するお問い合わせ

NPO法人喜界島サンゴ礁科学研究所
〒891-6151 鹿児島県大島郡喜界町塩道1508
TEL:0997-66-0200(研究員:駒越太郎)
メール:pr@kikaireefs.org

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