今の地球に生きる君へ

渡邊 剛

インコボーイさんからのメッセージ

喜界島サンゴキャンプは、自分にとって非常にいい刺激になりました。今自分はとても怖いです。なぜなら、この前図工の時間にクラスメイトが、面白いものを作っていたんです。それ何?と聞いたらひどい世界だったんです。未来の地球を現した作品で、みずうみはゴミだらけでした。あっ、今からやんなきゃだめだと思いました。こんな恐怖はじめて感じました。こんなに怖い話しなのに、真面目に聞いてくれる人はいないのです。地球温暖化?というような人の多さにはビックリしました。でも、みんなの前でたくさん地球温暖化について話すようになって今 自分のクラスはエコになっています。とても嬉しいです。たった一人でこんなに変わるなんて!だれもが、地球温暖化という存在を忘れる日がくるといいなと思っています。
こんな日を作るためにも、サンゴの研究者に没頭してください。
自分はサンゴキャンプで研究者のかっこよさに心をうたれました。大きくなったら、生き物の研究者になります!

喜界島サンゴ研究キャンプ、とても楽しかったです。来年度もぜひ参加させてください。

インコボーイより。


渡邊先生からの返事

Re: インコボーイ君へ、

喜界島サンゴ礁科学研究所の渡邊です。

ハワイ調査の途中でインコボーイ君からのメッセージを見ました。ちょうど、海で必死になって目的のサンゴを探そうと潜って泳いでヘトヘトになって、それでも見つからないという辛い時期だったのでとても勇気づけられました。メッセージをありがとう。

インコボーイ君が今感じている怖いという気持ちを、どうか忘れないでください。それはとても大切な感覚なのだと僕は思います。大人になって余裕や感覚が鈍ると人や社会は、目の前のことをありのままに見ることが難しくなったり、自分の都合の良いように物事を解釈しようとしてしまいます。地球には、素晴らしい自然が沢山あって多くの生き物がそれぞれの環境に適応して生存しています。そしてそれぞれの生物には生きのびてきた歴史があります。人間も例外ではありません。人間は、長い地球の歴史の中ではほんの最近になって出てきた存在、数億年も前からいるサンゴに比べると新キャラです。そんな新キャラの人類は他の動物に比べて肉体的に弱かったので、必死に知恵を使って様々な環境にも適応してきました。森を切り開いて食べ物や住む場所を作ったり、分厚い服を身にまとってより寒いところにも住めるようになりました。夜の闇が怖いと感じて火を起こし、やがては電気を生み出しました。そして、今や地球上の色々な環境で人間は生活し、地球環境さえも変えてしまえる力を持っています。その人間が生きるために獲得してきた能力が、今、地球の自然と生物にとって良い方向に行っていないのは残念なことですね。

地球温暖化の主な原因になっている二酸化炭素は、人間が石炭や石油などの化石燃料と言われるものを燃焼してできたものです。地球には、水と生命が存在し、その生物が長い間かかって大気中の二酸化炭素を地殻に閉じ込めて来ました。その一部が我々が電気を作ったり車に乗るときに使っている石炭や石油です。因みに、地球上の最大の炭素の貯蓄庫となっているのがサンゴを始めとした海洋生物が関与して生成された炭酸塩岩という岩石です。人間は、せっかく長い時間をかけて生物が地球に閉じ込めて来たものをわずかな時間で再び大気中に放出をしてしまっています。その二酸化炭素は地球の温暖化をもたらし、海洋表層に溶けだし、炭酸カルシウムの骨を作っているサンゴに大きなストレスを与えています。サンゴはサンゴ礁を形成して実に多くの生物を育み、海洋生物の多様性を支えています。大気中の二酸化炭素がこのまま増えていってサンゴ礁の海に溶けていったら、今後サンゴ礁はどのようになってしまうのでしょうか。

もちろん、今すぐにすべての人間が二酸化炭素を放出するのをやめることができれば、一番良いのかもしれません。ただ、今それはとても難しい状況になっていますね。理屈ではわかっていても、人間は、一度手にした快適さはなかなか手放すことはできません。そしてこれまでに多く二酸化炭素を排出して来た国とこれから発展するために沢山化石燃料を使いたい国とが対立をしています。そんな中で我々はどうしたら良いでしょうか。どうしたら素晴らしい自然や環境をインコボーイ君の世代が大人になっても、さらに、その次の世代にも残せていくのでしょうか。残念ながら僕にはまだ良くわかりません。でも、インコボーイ君やお友達がクラスの中でやったように、僕も考え続けてできることをやりたいと思います。ある大きな国の大統領が化石燃料の使用が温暖化をもたらしたとは限らない、と言った時、それに猛烈に反対や抗議をする人たちがいました。声を上げることはとても大事なことだと思います。でも、なぜ誰も「化石燃料の使用が温暖化をもたらした」と言い切れないのでしょうか。二酸化炭素が増えると温室効果によって地球が温暖化する、と誰もが思っていると思います。ですが、人間が化石燃料の使用を開始してから現在までの大気中の二酸化炭素の量の変化と気温の関係を示す直接的なデータはないというのが大きな原因の一つです。大気中の二酸化炭素の濃度を継続的に測り続けているのは、ハワイにおける過去60年間のものが最も長い記録で、海の中の二酸化炭素の観測はもっと短いものしかありません。えっと思うかもしれませんがそれが現実です。もちろん、コンピューターを使って計算して予測することはできます。だけれど、二酸化炭素は、大気や海洋、生物、のどれも関係する複雑な系の中で動いています。そして、それを排出する人間の挙動もまた複雑なのです。現在、人間の活動がどの程度、関わっているかを正確に見積もるために、まずは、直接的なデータを示すことができれば、と我々は考えています。

この夏のサイエンスキャンプで、僕が皆さんにお話しした研究者にとって大事なこと、感じること、見つけること、伝えること、残すこと、のうちインコボーイ君は、既に、その多くを実践していますね。素晴らしいです。きっとそんなインコボーイ君のような人たちが将来を切り開いて行くのだと思うととても心強く感じます。そして、僕たちの世代もまだまだ諦めずに、やれることをひとつづつやって、少しでもやがて訪れる将来のことを考えられるヒントになることを残せていけたら、そして、一緒に未来を語り合いたいなと思います。今回は、素敵メッセージと応援をありがとうござます。また、来年お会いしましょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です