喜界島サンゴ礁科学研究所・ハワイパシフィック⼤学・ハワイ⼤学・ワイキキ⽔族館・北海道⼤学・国⽴台湾⼤学の研究チームは、世界で最も深い水深に生息している有藻性サンゴが驚くべき早さで⾻格を形成していることを明らかにしました。
■背景
センベイサンゴ属は、インド洋から太平洋にかけて生息し、太陽の光が届く範囲で最も深いところに群集を形成することのできる有藻性イシサンゴの一属です。有藻性イシサンゴは、共生する褐虫藻の光合成によって、エネルギーを得ていますが、水深が深くなると、利用できる光が少なくなります。センベイサンゴの生息水深の下限では、利用できる太陽光は、海洋表面の0.2%未満とわずかです。一般的に、光が少ない環境では、有藻性イシサンゴの成長は遅くなるという傾向があります。よって、センベイサンゴは、深い海では、年間1 mmという非常にゆっくり成長していると考えられてきました。しかし、水深68 mを超える深度に住むセンベイサンゴの成長率はこれまでほとんど報告されていませんでした。
■研究手法
研究チームは、ハワイのAu’au海峡で、ハワイ大学の調査潜水艇Pisces IV / Vを用いて、水深68 m〜110 mに生息するセンベイサンゴのコロニーを採取し、ウラン-トリウム放射年代測定法により放射状の成長方向に沿ってサンゴの骨格の年齢を極めて正確に調べました。


■研究成果
光の少ない環境を考慮すると、以前の想定では、極端に深いところにいる大きなセンベイサンゴは、成長速度が非常に遅いため、非常に年齢が高いと考えられてきました。しかし、私たちの結果では、驚くべきことに、サンゴは比較的若く、成長率は浅海に棲むセンベイサンゴの成長率に匹敵します。成長率は、水深68 mで年間2.5 cm近く、水深110 m で年間7.6 mmという結果が出ました。

■今後の期待
この結果は、センベイサンゴは深い海に適応し、この水深を支配していることを示しています。薄いプレートのような骨格は、光を吸収することのできる表面積を大きくし、放射状に成長します。その表面には細かい凹凸があり、降り注ぐ光を効率的に吸収できる構造になっています。センベイサンゴのこのような戦略は、光の少ない環境でも成長率を保つことを可能にし、他の成長の遅い生物との競争に勝つことができたと考えられます。本研究成果はサンゴ礁をサンゴの柔軟な適応戦略を示し、サンゴ群集がダメージを受けたとしても、これまで考えられていた以上に早く回復することができると考えられます。
本研究成果はCoral Reefs誌に掲載されました。(2020年6月15日発行)
Kahng, S.E., Watanabe, T.K., Hu, H. et al. Moderate zooxanthellate coral growth rates in the lower photic zone. Coral Reefs (2020). https://doi.org/10.1007/s00338-020-01960-4
論文掲載誌のURL:https://link.springer.com/article/10.1007/s00338-020-01960-4
このリリースのお問い合わせ先 : 喜界島サンゴ礁科学研究所 理事長 渡邊剛
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