オンラインセミナー6/5(金)「貝を用いた環境解析」


6/5(金)にサンゴ塾オンラインセミナーとして「貝を用いた環境解析」を開催しました。
講師は、東京大学大気海洋研究所の白井厚太朗博士でした!

オンラインセミナーの受講者のみなさんに、アンケートにご協力いただきました。
ご回答ありがとうございました。

セミナー後に白井先生に受講者のみなさんからいくつか質問が寄せられました。
その質問にご回答いただきましたので、ぜひご覧ください!

Q.世界で一番長生きするアイスランド貝は実際何歳まで生きれると思いますか?

白井博士の回答

この質問はまだ誰も答えを知らない質問ですが,ぼくの単純な予想では1000年くらいが限界じゃないかなと考えています.
細胞が分裂できる回数には限りがあります.アイスランドガイは代謝が少なくて細胞分裂が遅いことが長生きな理由の一つと考えられていますが,さすがに1000年も生きれば限界を越えてしまうのではないかと思います.

Q.貝の成長は貝のしま模様で観察することができるそうですが、
貝殻の断面にある、年輪はどうしたら見れますか?
やはり、専門的な器具がないと無理ですか?
年輪の数=その貝の年齢ですか?

白井博士の回答

貝殻の断面の年輪は頑張れば身近なものを使って観察することもできます.
貝殻を切るときはダイヤモンドカッターというものを使いますが,頑張ればノコギリでも切れます.
次に断面をピカピカになるまで紙やすりでけずります.傷が無くなってピカピカになると,断面の成長線を観察することができます.成長線が細かすぎる場合は顕微鏡が必要になりますが,デジタルカメラやスキャナーで撮影して,パソコンで拡大しても観察することができます.
ただし,見えるしましま模様が必ず1年に1本できる年輪という訳ではありません.
1年に1本できる年輪のしま模様の特徴を明らかにした上で,その特徴をもつ年輪だけを数える必要があります.
少し難しいかもしれませんが,2017年に水産学会紙という雑誌にのっている「茨城県鹿島灘産チョウセンハマグリの年齢形質と年齢推定法」という論文に詳しい方法がのっています(インターネットで検索すれば読むことができます).

「茨城県鹿島灘産チョウセンハマグリの年齢形質と年齢推定法」(水産学会紙2017年)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/suisan/83/2/83_16-00038/_article/-char/ja/

Q.貝の年輪から貝の成長による変化と気候変動による変化はどのように見分けるのでしょうか。

白井博士の回答

貝の年輪による成長と気候変動の影響を見分けるためには,まずはそれらの関係性を調べる必要があります.
例えば,その貝が温かい年に良く育つのか,寒い年に育つのか,雨がふるほど育つのか,など,良く育つ環境についてまずは調べる必要があります.
その関係を明らかにしたうえで,知りたい場所や時代の貝がらを調べることで,やっと気候変動の歴史を解明することが可能になるのです.

Q.白井先生は、ムラサキガイのマンガンの濃度で津波の影響が分かるとおっしゃっていましたが、マンガンの濃度の違いで環境のどういった面が変化しているのですか。
また、マンガンの濃度が濃くなると何がいけないのですか。
そして、泥の中にはもともとマンガンが含まれているのですか。

白井博士の回答

マンガンは海水に含まれる濃度が低いのですが,海底の泥の中や陸上の土砂の中には高濃度で含まれています.そのため,海底泥が巻き上がったり土砂が流れ込んだりすると,海水中の濃度が上昇して,その結果貝がらに取り込まれる量が増加します.
このような仕組みから,貝がらのマンガンの濃度の変化を調べることで,陸から海に運ばれる土砂の量や,海底の泥がどれだけ巻き上がったかがわかります.
マンガンの濃度が濃くなること自体はそれほど大きな問題ではありません.
ただ,陸から土砂が大量に入ってきたり,海底の泥が巻き上がったりすると,それと一緒に陸や海底土に閉じ込められていた環境汚染物質が入ってきた可能性が心配されます.
一方,陸や海底土にはプランクトンの栄養が含まれているのですが,津波によって放出されてプランクトンの成長を助けた可能性もあります.
マンガンが増えたことが良い悪いという訳ではなく,貝がらのマンガンの変化からどういう環境変化が読み取れるのかという点が重要なポイントになるのです.

講義で白井先生と杉原先生が紹介してくれた貝の津波記録に関する論文はこちら!
詳しく知りたい方はぜひ読んでみてください。
Murakami-Sugihara, N., Shirai, K., Hori, M., Amano, Y., Fukuda, H., Obata, H., et al. (2019). Mussel Shell Geochemical Analyses Reflect Coastal Environmental Changes Following the 2011 Tohoku Tsunami. ACS Earth and Space Chemistry, 3(7), 1346–1352.

https://doi.org/10.1021/acsearthspacechem.9b00040

受講者のみなさん、白井先生、質問とご回答をありがとうございました!

サンゴ塾オンラインセミナーの次回のご案内と過去開催のセミナーは、こちらからご覧ください。
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