サンゴ礁科学の最新情報が詰まった季刊誌をリニューアル! 『KIKAIREEFS〜人とサンゴと地球の未来〜』

記念すべきリニューアル号は、写真家大杉隼平さんによる撮り下ろし写真を表紙に、スペシャル対談など「サンゴの島で出会う」を切り口に様々な特集を展開しています。
KIKAIREEFS 14号カバー

喜界島サンゴ礁科学研究所(鹿児島県喜界町 理事長:渡邊剛)は、サ ンゴ礁科学の最新情報や研究成果などをお伝えする情報誌 『KIKAIREEFS〜人とサンゴと地球の未来〜』を、本日6月8日の世界 海の日(World Oceans Day)に合わせリニューアル発行しました。

KIKAIREEFS は、喜界島サンゴ礁科学研究所の研究成果や活動の他、 弊所に所属する研究者や学生によるコラムを掲載している無料の季刊 誌(年4回発行)です。大人から子供まで、サンゴや研究について知 識がある人もない人も楽しめる内容になっています。

リニューアル号となる KIKAIREEFS14 号では、写真家の大杉隼平さん による撮り下ろし写真を表紙に、冊子デザインはデザイナーの山下由香里さん、編集は本研究 所に関わる研究者や学生など多くの方の協力によって作られました。

そして、大杉さんと理事長渡邊によるサイエンス×アートのスペシャル対談や、礼文島と喜界 島で文理の枠を超えたコラボレーション研究の報告、そして研究者による最新の研究成果やレ ポートなど、「サンゴの島で出会う」を軸に様々なテーマのコーナーを展開しています。

リニューアルにあたり、喜界島サンゴ礁科学研究所所長山崎敦子は、「私たちは、希少な自然環 境と豊かなサンゴ礁生態系に囲まれた奄美群島・喜界島で、人と地球が共生する方法を最先端 のフィールドサイエンスと、それを活用した次世代の教育により探求し、日本及び世界に向け て発信をしています。私たちの理念である「100 年後に残す」を目指し、研究所に集う人たち の活動を 100 年後にも残せるように、KIKAIREEFS にはそんな想いが込められた私たちからの 未来への手紙です。」とコメントをしています。

KIKAIREEFS は、特設サイトよりご登録いただいた方へ無料で配信をしています。過去から現 在の地球環境の記録が詳細に閉じ込められている喜界島を研究拠点とし、研究や教育などの私 たちの活動をぜひ知っていただき、ご支援・応援ください。

【ヘッドライン】
KIKAIREEFS 〜人とサンゴと地球の未来〜 14号 「サンゴの島で出会う」

  1. スペシャル対談 喜界島で出会った科学者と写真家。“本物”の“記憶”を100年後にに残す。 (写真家 大杉隼平さん×喜界島サンゴ礁科学研究所理事長 渡邊剛)
  2. MIRAI Project Lab 海と時間を超えて、北と南の島が出会う
  3. KIKAI College Note みらいのサンゴ礁に出会う
  4. Sangology(サンゴロジー)私とサンゴの関係 深海にもあるサンゴ礁 研究者による寄稿 コーナー/Research REPORT 研究の成果をご報告
  5. Check! #サンゴ研 喜界島サンゴ礁科学研究所の活動報告
  6. INFORMATION お知らせ

■『KIKAIREEFS』について

喜界島サンゴ礁科学研究所では、会員やメールでご登録をいただいた皆様に年4回ニュースレターをお送りしています。こちらよりご登録後、特設サイトから購読いただけます。

地球温暖化によってアラビア海の湧昇流が弱まっている

〜造礁性サンゴ骨格で復元した過去1,000年間の古気候記録から発見〜

ポイント         

・現生・化石サンゴの骨格から,アラビア海の1,000年前〜現在の海水温・塩分変動を復元。

・近年のアラビア海の湧昇流は過去1000年前と比べて弱まっている。

・この湧昇流の弱化は,近年のインド洋の急激な温暖化とインド亜大陸の緩やかな温暖化に起因。

概要                    

北海道大学大学院理学研究院及び喜界島サンゴ礁科学研究所,総合地球環境学研究所の渡邊 剛講師,九州大学大学院理学研究院及び喜界島サンゴ礁科学研究所の山崎敦子助教,北海道大学大学院理学院博士後期課程の渡邉貴昭ら(執筆当時)の研究グループは,過去1,000年間と比べて現在のアラビア海の湧昇流が弱まっていることを発見しました。 インド洋の夏季モンスーンによって発生するアラビア海の湧昇流は,深層の海水を海洋表層へ輸送しています。このときに輸送される海洋深層の低海水温及び富栄養な海水は,海洋表層の生態系や周辺の気候に大きな影響を与えます。 渡邊講師らの研究グループはアラビア海産の造礁性サンゴ*1の酸素安定同位体比*2やSr/Ca比*3(ストロンチウム/カルシウム比)を分析し,1,000年前から現在までの海水温・塩分変動を復元しました。その結果,近年の湧昇流は過去1,000年間と比べて弱くなっていることを解明しました。 このアラビア海の湧昇流の弱化傾向は,インド洋周辺の気候や漁業に影響をもたらすことが予想されます。 なお,本研究成果は, 2021年5月24日(月)公開のGeophysical Research Letters誌に掲載されました。
インド洋周辺の温暖化傾向
地図上の赤色地域では急速に温暖化しており,黄色地域では緩やかに温暖化していることを示す。地図上の星印はサンゴ試料を採取したマシラ島を示す。

【背景】

 インド洋では,季節によって風向きと強さが変わるモンスーンが重要な気象要素の一つです。アラビア海では,インド洋からインドに向かって吹く夏季モンスーンによって湧昇流が毎年発生します。湧昇流は,海洋深層から海洋表層へ冷たい海水や栄養塩を運ぶため,周辺の気候や海洋生態系に重大な影響をもたらします。

これまでの研究では,近年の地球温暖化によってユーラシア大陸がインド洋よりも急速に温暖化し,夏季モンスーンとアラビア海の湧昇流は強くなると考えられていました。一方で,実際の観測記録はインド洋が他地域よりも急速に温暖化しており(p.1.図),夏季モンスーンは弱化している可能性もあります。アラビア海における湧昇流の強弱傾向を検証するためには,海水温や栄養塩,塩分などの連続した観測記録が必要です。

しかしながら,本海域における長期的な海洋観測データは非常に限られており,過去から現在までの湧昇流の強弱傾向を明らかにすることは困難でした。そこで本研究では,過去の環境変化を月単位で復元できる造礁性サンゴ骨格を用いて,過去1,000年間におけるアラビア海の海水温・塩分変動を復元し,湧昇流の強弱傾向の変遷を復元しました。

【研究手法】

研究グループは,2016年にアラビア半島・オマーン国南部のマシラ島(p.1.図)で海岸に打ち上がった造礁性サンゴ群を発見し,このサンゴ群(化石サンゴ)および現生サンゴを研究室に持ち帰りました。化石サンゴにウランートリウム年代測定*4を用いたところ西暦1167〜1967年に生息したサンゴであることがわかりました。造礁性サンゴの骨格には樹木のように年輪が刻まれており(図1),過去の大気・海洋の環境変動が1週間〜1ヶ月間程度の細かい精度で記録されています。

本研究では,2週間に相当する年輪ごとに区切って化学分析(酸素安定同位体比,Sr/Ca比)を行いました。さらに,サンゴ骨格中に記録された化学組成の変化からわかる塩分変動をもとに,過去の湧昇流の強さを復元しました。

【研究成果】

現生の造礁性サンゴ骨格試料から復元した塩分変動を解析したところ,アラビア海の湧昇流が発生した際に,海洋表層の塩分が低下していることがわかりました(図2)。これは,湧昇流によって深層から表層へ塩分が低い海水が湧き上がってくるために,サンゴが生息する海洋表層の塩分が低下することを示しています。また,塩分の低下幅は湧昇流の強さと相関していることがわかりました。

この結果をもとに,西暦1167〜1967年に生きていたサンゴの記録と比較しました。

同様に,西暦1167〜1967年に生きていたサンゴ群(化石の造礁性サンゴ骨格試料)から塩分変化を復元したところ,現生サンゴから得られた記録と同じく,湧昇流が発生する季節に塩分低下が記録されていました(図3)。さらに,湧昇流の強度を示す塩分指標の低下幅を算出したところ,近年は過去1,000年間に比べて著しく小さいことがわかりました。

これは,「近年にかけてアラビア海の湧昇流は強くなる」というこれまでの仮説とは逆に,「近年のアラビア海の湧昇流は弱化傾向にあった」ことを示唆しています。

本研究で明らかとなったアラビア海の湧昇流の弱化傾向は,近年のインド洋における急激な温暖化とインド亜大陸における緩やかな温暖化(p.1.図)によって夏季モンスーンが弱化していることに起因すると考えられます。

【今後への期待】

本研究では造礁性サンゴ骨格を用いて古環境復元を行うことで,近年のアラビア海の湧昇流が弱化傾向にある証拠を世界で初めて発見しました。アラビア海の湧昇流は現在も続く温暖化に対して弱まり続ける可能性が高く,今後もインド洋周辺の気候や漁業に対して広く影響を及ぼすことが予想されます。

論文情報

論文名 Corals reveal an unprecedented decrease of Arabian Sea upwelling during the current warming era(造礁性サンゴ骨格が記録した近年の温暖化時代におけるアラビア海の湧昇流の弱化) 著者名 渡邉貴昭1,2,3,渡邊 剛2,4,5,Miriam Pfeiffer 3,Hsun-Ming Hu 6, Chuan-Chou Shen 6,     山崎敦子2,4,71北海道大学大学院理学院, 2喜界島サンゴ礁科学研究所,3キール大学,4北海道大学大学院理学研究院,5総合地球環境学研究所,6台湾国立大学,7九州大学大学院理学研究院) 雑誌名 Geophysical Research Letters(地球科学の専門誌) DOI 10.1029/2021GL092432 公表日 2021年5月24日(月)(オンライン公開)

お問い合わせ先

北海道大学大学院理学研究院 講師 渡邊 剛(わたなべつよし)

TEL 011-706-4637   FAX 011-706-4637   メール nabe@sci.hokudai.ac.jp

URL https://www.sci.hokudai.ac.jp/~nabe/

NPO法人喜界島サンゴ礁科学研究所広報担当 山本亜沙美(やまもとあさみ)

T E L  0997-66-0300     F A X  0997-66-9335     メール pr@kikaireefs.org

 URL https://kikaireefs.org/

九州大学大学院理学研究院 助教 山崎敦子(やまざきあつこ)

TEL 092-802-4194   メール  yamazakiatsuko@geo.kyushu-u.ac.jp

URL https://kyushucrees.com

配信元

北海道大学総務企画部広報課(〒060-0808 札幌市北区北8条西5丁目)

TEL 011-706-2610   FAX 011-706-2092   メール jp-press@general.hokudai.ac.jp

 NPO法人喜界島サンゴ礁科学研究所広報部門(〒891-6151喜界町大字塩道1508)

T E L  0997-66-0300    F A X  0997-66-9335    メール  pr@kikaireefs.org

総合地球環境学研究所広報室(〒603-8047 京都市北区上賀茂本山457番地4)

TEL 075-707-2450   FAX 075-707-2515   メール kikaku@chikyu.ac.jp

九州大学広報室(〒819-0395 福岡市西区元岡744) TEL 092-802-2130   FAX 092-802-2139   メール koho@jimu.kyushu-u.ac.jp


図1. 本研究に使用した造礁サンゴのエックス線写真
白黒一対の年輪が見られる。赤線に沿って化学分析を実施した。図中の矢印はサンゴ骨格の成長方向,黒色またはグレー色のスケールバーは5cmを示す。
図2. 現生サンゴから得られた記録とアラビア海マシラ島周辺の塩分の深度分布
(a) 上図は衛星による海水温観測記録(黒線)とサンゴ骨格に記録されたSr/Ca比(赤線;海水温を反映),下図は鉛直混合の深さ(黒線;湧昇流のような深層と表層の海水循環を示す指標)とサンゴ骨格から復元した海水の酸素安定同位体比(青線;塩分を反映)を示す。(b) 赤線と青線はそれぞれ夏季と冬季の塩分の深度分布を示す。海洋表層では,冬季よりも夏季の塩分が低くなる(黒矢印)。水深200m程度の深さにある低塩分の海水が夏季の湧昇流によって湧き上がるために,海洋表層の塩分が低下する。
 

【用語解説】                                                                                                     

*1 造礁性サンゴ … サンゴの中でも,体内に褐虫藻(かっちゅうそう)と呼ばれる藻を共生させることで骨格の成長速度を速めている造礁性サンゴのこと。造礁性サンゴは,共生している褐虫藻が光合成で得たエネルギーを利用することで,骨格の成長速度を速めている。造礁性サンゴの骨格は炭酸カルシウムからなり,樹木の年輪のような骨格を形成する。この年輪に沿って化学分析を行うことで,1週間〜1ヶ月程度の細かい精度で古環境を復元できる。サンゴの死後,骨格が化石として保存されるため,サンゴが生きていた時代の古環境を復元できる。

*2 酸素安定同位体比 … 酸素には質量数16,17,18の3つの酸素安定同位体比が存在する。造礁性サンゴなどの炭酸カルシウム骨格は質量数16の酸素に対する質量数18の酸素の割合(酸素安定同位体比)が骨格形成時の水温や海水の酸素安定同位体比(塩分指標)に依存することが知られている。このため,海水温のみに依存する他の指標(例えばSr/Ca比)と組み合わせて検証することで海水の酸素安定同位体比(塩分指標)を復元できる。

*3 Sr/Ca比 … 造礁性サンゴ骨格中の陽イオンはほとんどカルシウムイオン(Ca2+)であるが,ごくわずかに別の元素も含まれている。たとえば,ストロンチムイオン(Sr2+)が造礁性サンゴ骨格に取り込まれる割合は,骨格形成時の海水温に依存することが知られているため,骨格中のSrとCaの比を検証することで,過去の海水温を調べることができる。

*4 ウランートリウム年代測定 … サンゴ骨格中のウランおよびトリウムの放射性同位体を用いた年代測定法。サンゴ骨格に取り込まれたウラン同位体がどれほどトリウムへと放射改変したかをもとに年代を推定する。

英語版プレスリリース(北海道大学)はこちらからご覧ください。
Research Press Release|June 04, 2021
Corals tell Arabian Sea story of global warming
Coral insights into 1,000 years of seasonal changes in the Arabian Sea warn of significant impacts caused by global warming.

喜界島のサンゴ図鑑(ウェブ版)完成

喜界島のサンゴ図鑑(ウェブ版)完成

大人から子供までサンゴに親しみながら学ぶことができる図鑑をオンライン科学イベントで一般公開!

発行:喜界島サンゴ礁科学研究所

■編著者
・藤井琢磨/鹿児島大学国際島嶼教育研究センター[奄美分室]特任助教
・北野裕子/国立環境研究所生物・生態系環境研究センター 特別研究員
・磯村尚子/沖縄工業高等専門学校生物資源工学科 准教授
・深見裕伸/宮崎大学農学部海洋生物環境学科 教授

■ポイント
・喜界島のサンゴの図鑑(ウェブ版)を作成しました。
・大人から子供まで幅広い年代が簡単に利用でき、サンゴに 親しみが持てるように工夫を凝らして作成しました。
喜界島サンゴ礁研究所に保管されている証拠標本が示されており、学術的記録としての有用性も高めてあります。

喜界島のサンゴ図鑑はウェブ版なので、誰でも無料で簡単に見ることができます。

■ 概要
鹿児島大学国際島嶼教育研究センター(奄美分室)の藤井琢磨特任助教、国立環境研究所生物・生態系環境研究センターの北野裕子特別研究員、沖縄工業高等専門学校物資源工学科の磯村尚子准教授、宮崎大学農学部海洋生物環境学科の深見裕伸教授らの研究グループは、喜界島サンゴ礁科学研究所(渡邊剛理事長、山崎敦子所長)と共同で、喜界島のサンゴに親しみを持ってもらい、喜界島のサンゴの保全につなげていくことを目的として、喜界島のサンゴ図鑑(ウェブ版)を作成しました。2020年の2月の約1週間、喜界島の様々な場所を潜水調査し、そこで見つけたサンゴについてまとめたものです。掲載した全種に喜界島サンゴ礁科学研究所保管の証拠標本番号も付記されているので、将来的に分類学的研究が進み種名が変わったとしても(例えば、1種と思われていたものが2種に分かれたり、あるいは名前が変わっても)、その標本を再確認することによって、遡って、実際にどのような特徴の、どの種のことを指しているのか誰でも調べることができます。


図鑑には今回の調査で発見されたものの内、種名が判明したサンゴ14科48属130種を掲載しています。将来的には喜界島の全てのサンゴの種類を網羅していきたいと考えています。
本図鑑は8月8日に喜界島サンゴ礁科学研究所のホームページで公開される予定です。

■ 発表
喜界島サンゴ礁科学研究所のホームページにて8月8日以降に公開
https://kikaireefs.org/kikaireefs-project/

■ 公開予定
喜界島のサンゴの図鑑(ウェブ版)は喜界島サンゴ礁科学研究所が行うオンライン科学イベント【KIKAIカレッジ】~オープンラボ ウィーク~でお披露目いたします。
同イベントは全国の小学生・中学生・高校生からサンゴ礁科学に関心がある大人を対象にしており、喜界島のサンゴの図鑑(ウェブ版)を教材に授業が行われます。本イベントの取材は喜界島サンゴ礁科学研究所(TEL:0997-66-0200)までお問い合わせください。
また、「喜界島サンゴ図鑑100年プロジェクト」とし喜界島のサンゴ図鑑を更新していくための調査費、編集費用等をクラウドファンディングで募集します。

【本研究への支援】
本研究は、喜界島漁業協同組合、鹿児島県大島支庁林務水産部林務水産課水産係、ヨネモリダイビングサービスの方々の協力により実施されました。また、JSPS 科研費、令和1 年度文部科学省特別経費、2019 年度独立行政法人環境再生保全機構地球環境基金、国立環境研究所の支援を受けて実施されました。

本件の問い合わせ先

【研究に関する問い合わせ先】

■鹿児島大学国際島嶼教育研究センター/特任助教 藤井琢磨(ふじいたくま)
TEL:0997-69-4852 /FAX: 0997-69-4853 /個人携帯:090-9389-4672
メール:tfujii@cpi.kagoshima-u.ac.jp

■宮崎大学農学部 海洋生物環境学科/教授 深見裕伸(ふかみ ひろのぶ)
TEL:0985-58-7221 /メール:hirofukami@cc.miyazaki-u.ac.jp

【報道に関する問い合わせ先】

■NPO法人喜界島サンゴ礁科学研究所/担当者名:安田暢子
TEL:0997-66-0200 / FAX:0997-58-9335 /メール:pr@kikaireefs.org

■鹿児島大学広報センター(企画評価課広報係)
TEL:099-285-7035 / FAX:099-285-3854 /メール:sbunsho@kuas.kagoshima-u.ac.jp

■宮崎大学 企画総務部総務広報課 TEL:0985-58-7114 / FAX:0985-58-2886

■沖縄工業高等専門学校 総務課総務係 TEL:0980-55-4003 /メール:ssoumu@okinawa-ct.ac.jp

琉球列島「最北端」のアオサンゴの群生を確認

琉球列島「最北端」のアオサンゴの群生を確認

鹿児島県大島郡喜界町で、長さ230 m幅40 mの面積約6217㎡にわたるアオサンゴの群生を確認しました。今後は、地元ダイビング業者や自治体と協力し、保全を進めていきます。

■ 経緯
アオサンゴは、アオサンゴ目、アオサンゴ科、アオサンゴ属の1 属1 種のサンゴであり、IUCN(国際自然保護連合)のレッドデータリスト絶滅危惧Ⅱ類に掲載されています。アオサンゴの分布域は広く、インド太平洋のサンゴ礁地域に生息し、日本では琉球列島のサンゴ礁海域で生息が確認されています。世界最大級とも言われる石垣島白保の大群生の他に、石垣島伊原間・沖縄本島大浦湾において群生が確認されています。これまで喜界島では、アオサンゴの生息は確認されていましたが、連続性の良い群生は確認されていませんでした。2019年9月に喜界島小野津沖においてヨネモリダイビングサービスのガイド依田純一氏とWWFジャパン職員の鈴木倫太郎氏が潜水したところ、大規模なアオサンゴの群生の存在を発見しました。同年10月18日に喜界島サンゴ礁科学研究所とWWFジャパンは共同で生息範囲の調査を実施しました。(調査協力:ヨネモリダイビングサービス)

【 調査方法 】
調査は海上から目視によってアオサンゴの群生が生息している範囲を確認し、その後スクーバ潜水によって、アオサンゴの群生の範囲を確認するとともに、造礁サンゴの被度(海底を覆う生きたサンゴの割合)、アオサンゴの割合について、スポットチェック法によって記録しました。また記録したポイントの海上において、GPSを用いて緯度経度の位置情報を取得しました。これらの調査の結果、小野津沖に分布するアオサンゴの群生の範囲とその状況を把握しました。

【 調査結果 】
アオサンゴの群生は水深6~20 mの間に長さ230 m、幅40 mの範囲、面積約6217㎡にわたって分布していることを確認しました。この範囲の中におけるサンゴの被度は20~90%であり、水深が浅くなるほどサンゴは少なくなります。また、この範囲内においてサンゴの被度は一様ではありませんが、連続してアオサンゴが分布し、サンゴの被度が90%を超える場所においては、その9割がアオサンゴによって占められる場所も確認されました。また、アオサンゴ群体の形は、棒状のものが多く、石垣島の白保のサンゴ礁で見られる板状のものとは異なります。

【 関係機関との調整について 】
喜界島サンゴ礁科学研究所・喜界町役場・WWFジャパンが協議し、確認したアオサンゴの群生について、地元団体へヒアリングを実施しました。

■ヒアリングの結果
・アオサンゴの群生の海域は潮流が非常に速く、安全性に不安があります。
・この海域では通常、漁業活動及びダイビングを行うことはありません。
(稀に活動することもあります)

【 地域でアオサンゴを見守る指針 】
ヒアリングの結果をもとに、地域でアオサンゴ を見守るための指針を定めました。

(1)陸から直接行かない。
アオサンゴが見られる場所は、潮の流れが大変早くとても危険な場所です。海岸から泳いで近づくと、流される危険があります。陸から泳いでいかないようにお願いします。

(2)船で行く。
アオサンゴを見に行く場合は、海域に詳しい方にお願いして船で訪れてください。
このアオサンゴ群生に関するお問い合わせは、喜界島サンゴ礁科学研究所へご連絡ください。

(3)継続的なモニタリングを実施する。
アオサンゴを守るために、群生の状況を定期的に調査します。

(4)関係機関と協力した保全を進める。
アオサンゴの群生に変化があった場合、関係者と情報を共有し、適切に対応するための話し合いを行います。

(5)事故防止
島外からの観光客の方が事故にあわないように不用意な情報提供等は避けましょう。

【 今後の展開 】
喜界島で確認されたアオサンゴの群生は、これまで琉球列島で確認されてきたもののなかで最北端に位置する大群生であることから希少な存在と考えられます。学術的な観点だけではなく、地元の方々のサンゴ礁への興味関心の喚起、地域社会とサンゴ礁海域のつながりの構築、地元の自然資源、また共通財産として多様な価値を有しています。この島の方々にとっての共有財産を保全する目的から、アオサンゴの群生の継続的なモニタリングが必要です。今後は、喜界島サンゴ礁科学研究所が中心となり、地元ダイバー・事業者等による定期的なモニタリング調査を引き続き行う予定です。

 

本件に関するお問い合わせ

NPO法人喜界島サンゴ礁科学研究所
〒891-6151 鹿児島県大島郡喜界町塩道1508
TEL:0997-66-0200(研究員:駒越太郎)
メール:pr@kikaireefs.org

Surprising growth rates discovered in world’s deepest photosynthetic corals

Surprising growth rates discovered in world’s deepest photosynthetic corals

The collaboration work with Dr. Samuel Kahng, our mentor of Coral Reef Science Camp, is published in the journal “Coral Reefs”.

New research published in the journal Coral Reefs revealed unexpectedly high growth rates for deep water photosynthetic corals. The study, led by Samuel Kahng, affiliate graduate faculty in the University of Hawai‘i at Mānoa School of Ocean and Earth Science and Technology (SOEST), alters the assumption that deep corals living on the brink of darkness grow extremely slowly.

Leptoseris is a group of zooxanthellate coral species which dominate the coral community near the deepest reaches of the sun’s light throughout the Indo-Pacific. Symbiotic microalgae (called zooxanthellae) live within the transparent tissues some coral—giving corals their primary color and providing the machinery for photosynthesis, and in turn, energy.

Deeper in the ocean, less light is available. At the lower end of their depth range, the sunlight available to the Leptoseris species examined in the recent study is less than 0.2% of surface light levels. Less light dictates a general trend of slower growth among species that rely on light for photosynthesis.

Previous studies suggested that photosynthetic corals at the bottom of the ocean’s sunlit layer grow extremely slowly – about 0.04 inch per year for one species of Leptoseris. Until recently, there were very few data on growth rates of corals at depths greater than about 225 feet given the logistical challenges of performing traditional time series growth measurements at these depths.

Kahng, who is also an associate professor at Hawai‘i Pacific University, collaborated with SOEST’s Hawai‘i Undersea Research Laboratory (HURL), the Waikiki Aquarium, National Taiwan University, Hokkaido University and KIKAI institute for Coral Reef Sciences to collected colonies of Leptoseris at depths between 225 and 360 feet in the Au‘au Channel, Hawai‘i using HURL’s Pisces IV/V submersibles. The research team used uranium-thorium radiometric dating to accurately determine the age of the coral skeletons at multiple points along its radial growth axis – much like one might determine the age of tree rings within a tree trunk.

“Considering the low light environment, the previous assumption was that large corals at these extreme depths should be very old due to extremely slow growth rates,” said Kahng. “Surprisingly, the corals were found to be relatively young with growth rates comparable to that of many non-branching shallow water corals. Growth rates were measured to be between nearly 1 inch per year at 225 feet depth and 0.3 inches per year at 360 feet depth.”

The research team found that these low light, deep water specialists employ an interesting strategy to dominate their preferred habitat. Their thin skeletons and plate-like shape allow for an efficient use of calcium carbonate to maximize surface area for light absorption while using minimal resources to form their skeleton. These thin corals only grow radially outward, not upward, and do not thicken over time like encrusting or massive corals.

“Additionally, the optical geometry of their thin, flat, white skeletons form fine parallel ridges that grow outward from a central origin,” said Kahng. “In some cases, these ridges form convex spaces between them which effectively trap light in reflective chambers and cause light to pass repeatedly through the coral tissue until it is absorbed by the photosynthetic machinery.”

The strategic efficiency of Leptoseris enabling its robust growth rates in such low light has important implications for its ability to compete for space and over-shade slower growing organisms.

“It also illustrates the flexibility of reef building corals and suggests that these communities may be able to develop and recover from mortality events much faster than previously thought,” said Kahng.

Researcher contact:

Tsuyoshi Watanabe, PhD
KIKAI institute for Coral Reef Sciences
Faculty of Science, Hokkaido University
nabe(at)kikaireefs.org (please change (at) to @ when you send e-mail.)

Samuel E. Kahng, PhD
Affiliate graduate faculty, University of Hawai‘i at Mānoa, School of Ocean and Earth Science and Technology
Associate Professor of Oceanography, Hawaii Pacific University
808-236-3562
skahng(at)hpu.edu(please change (at) to @ when you send e-mail.)

Figure 1. A colony of Leptoseris hawaiiensis at 315 feet in the Au’au Channel Hawaii. Credit: HURL UH
Figure 2. A colony of deep water Leptoseris sp. Note fine rows of septocostae radiating outward from a central origin and the low density of polyps. Credit: Sam Kahng
Figure 3. A magnified view of the polyps from a deep water Leptoseris sp. Note what appears to be vestigial tentacles (which do not extend) surrounding some of the polyps. There are identical bulbs of tissue protruding between some of the septocostae in between the polyps. Credit: Sam Kahng

Kahng, S.E., Watanabe, T.K., Hu, H. et al. Moderate zooxanthellate coral growth rates in the lower photic zone. Coral Reefs (2020).

https://doi.org/10.1007/s00338-020-01960-4

【論文発表のお知らせ】世界最深の有藻性サンゴが驚異的な速度で成長することを発見

【論文発表のお知らせ】世界最深の有藻性サンゴが驚異的な速度で成長することを発見

喜界島サンゴ礁科学研究所・ハワイパシフィック⼤学・ハワイ⼤学・ワイキキ⽔族館・北海道⼤学・国⽴台湾⼤学の研究チームは、世界で最も深い水深に生息している有藻性サンゴが驚くべき早さで⾻格を形成していることを明らかにしました。

■背景
センベイサンゴ属は、インド洋から太平洋にかけて生息し、太陽の光が届く範囲で最も深いところに群集を形成することのできる有藻性イシサンゴの一属です。有藻性イシサンゴは、共生する褐虫藻の光合成によって、エネルギーを得ていますが、水深が深くなると、利用できる光が少なくなります。センベイサンゴの生息水深の下限では、利用できる太陽光は、海洋表面の0.2%未満とわずかです。一般的に、光が少ない環境では、有藻性イシサンゴの成長は遅くなるという傾向があります。よって、センベイサンゴは、深い海では、年間1 mmという非常にゆっくり成長していると考えられてきました。しかし、水深68 mを超える深度に住むセンベイサンゴの成長率はこれまでほとんど報告されていませんでした。

■研究手法
研究チームは、ハワイのAu’au海峡で、ハワイ大学の調査潜水艇Pisces IV / Vを用いて、水深68 m〜110 mに生息するセンベイサンゴのコロニーを採取し、ウラン-トリウム放射年代測定法により放射状の成長方向に沿ってサンゴの骨格の年齢を極めて正確に調べました。

Fig.1 ハワイ・アウアウ海峡にハワイセンベイサンゴの群体(Credit:HURL UH)
Fig.2 深場に棲むセンベイサンゴ属の群体。中心から放射状に伸びる骨格の凹凸と散在する個体(ポリプ)が観察できる(Credit:Sam Kahng)

■研究成果
光の少ない環境を考慮すると、以前の想定では、極端に深いところにいる大きなセンベイサンゴは、成長速度が非常に遅いため、非常に年齢が高いと考えられてきました。しかし、私たちの結果では、驚くべきことに、サンゴは比較的若く、成長率は浅海に棲むセンベイサンゴの成長率に匹敵します。成長率は、水深68 mで年間2.5 cm近く、水深110 m で年間7.6 mmという結果が出ました。

Fig.3 深場に棲むセンベイサンゴ属の個体(ポリプ)の拡大画像。一部のポリプに触手が見える。 また、ポリプ同士の間にも新しいポリプの中心が小さく見える。(Credit:Sam Kahng)

■今後の期待
この結果は、センベイサンゴは深い海に適応し、この水深を支配していることを示しています。薄いプレートのような骨格は、光を吸収することのできる表面積を大きくし、放射状に成長します。その表面には細かい凹凸があり、降り注ぐ光を効率的に吸収できる構造になっています。センベイサンゴのこのような戦略は、光の少ない環境でも成長率を保つことを可能にし、他の成長の遅い生物との競争に勝つことができたと考えられます。本研究成果はサンゴ礁をサンゴの柔軟な適応戦略を示し、サンゴ群集がダメージを受けたとしても、これまで考えられていた以上に早く回復することができると考えられます。

本研究成果はCoral Reefs誌に掲載されました。(2020年6月15日発行)
Kahng, S.E., Watanabe, T.K., Hu, H. et al. Moderate zooxanthellate coral growth rates in the lower photic zone. Coral Reefs (2020). https://doi.org/10.1007/s00338-020-01960-4
論文掲載誌のURL:https://link.springer.com/article/10.1007/s00338-020-01960-4

このリリースのお問い合わせ先 : 喜界島サンゴ礁科学研究所 理事長 渡邊剛
〒891-6151
鹿児島県大島郡喜界町大字塩道1508 / TEL:0997-66-0200(担当 安田)
メールアドレス: pr@kikaireefs.org

【プレスリリース】 地球温暖化が西インド洋の気候システムに与えた影響を解明 〜オマーン産サンゴから地球温暖化停滞時におけるインド洋ダイポール現象を復元〜

地球温暖化が⻄インド洋の気候システムに与えた影響を解明 〜オマーン産サンゴから地球温暖化停滞時におけるインド洋ダイポール現象を復元〜 
渡邊 剛 理事長,山崎 敦子 所長らの研究成果が,英国時間2019年2月14日(木)公開のScientific Reports誌に掲載されました。
研究成果の詳細は下記URLにてご覧いただけます。http://kikaireefs.org/KIKAI-press_20190226.pdf

(山崎)
喜界島サンゴ礁科学研究所http://kikaireefs.org